事象の繰り返し頻度とヒヤリハット【インシデントレポートシステムを用いた注射薬に関するヒヤリハット報告の解析とその評価】

論文紹介

  • インシデントレポートシステムを用いた注射薬に関するヒヤリハット報告の解析とその評価
  • 若林進 et al.
  • 第26回医療情報学連合大会(P16-5)、2006、日本

背景と目的

インシデントレポートシステムの運用によってここのヒヤリハット報告の情報解析は容易になってきた(@杏林大学医学部付属病院)。この情報解析を通して、「ヒヤリハット報告発生率」(どれだけの医療行為に基づき発生しているか)が疑問となった。そのため、注射薬に関するヒヤリハットに特化して解析・評価を行った。

方法

2006年1~4月のインシデントレポートを利用。ヒヤリハット報告発生率は、

ヒヤリハット報告発生率=ヒヤリハット報告の件数 ÷ 薬品の処方回数 x 100

で算出されている。

結果と考察

発生報告率は0.079%(282/358,843)。特にインスリン製剤に関するヒヤリハット報告率は、全体の報告率よりも高かった(インスリンのヒヤリハットは多い)。一方、インスリン製剤の処方回数が多い診療科では、報告率は低めであった(インスリンをよく使っている診療科では、そのヒヤリハットが少ない)。

考えられる仮説は以下の二つだが、どちらも完全な相関関係は得られなかった。

  • 処方量が多いと薬品に多く接するため、ヒヤリハットは増える
  • 処方量が少ないと薬品に不慣れなため、ヒヤリハットは増える

思いつきメモ

今後に注目。

今回のデータでは相関が導き出せていないが、別な薬品などでも同等の評価をしていくことで、その傾向が明らかにできそう。

「慣れ」が逆に働く可能性は?

不慣れだとヒヤリハットが増える(=慣れるとヒヤリハットは減る)という仮説が立てられているが、逆は考えられないか。扱いに慣れることで、気を抜いたりしてしまい、ヒヤリハットが増加する可能性もあるはず。